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再結成 Smashing Pumpkins のツアー日程が発表になった時、殆どがフェスティバルの出演だったので、きっと日本のフェスティバルにも出るだろうと思い、そのときに初新生 Pumpkins のショウが観られたらいいなって思っていた(結構沢山の人にドイツの Rock am Ring に行かないの?」って訊かれたんだけど、何故にワタシがドイツに行くと思われたんだろう? UK とかじゃなくてドイツ。まぁ判らんでもないけど…)。確かに Jimmy Chamberlin からも「夏に会いましょう」といったメッセージをいただいていたのだが、残念ながら諸事情により Pumpkins は日本のフェスには参加せず。それが判った途端 North Carolina と San Fancisco でのショウ日程がコンファームされた。特に San Francisco は The Fillmore の 11 days (12days?)。 The Fillmore には行きたい。そこで Pumpkins が観られるんだったら最高だな、と。…ということで、Fuji Rock にも別に行く予定もなかったし、久しぶりに Daira さんを誘い、Fillmore shows の後半戦になる27日28日の公演に行く事にした。

今回は28日にショウの写真を撮らせて欲しいとお願いしていたので、27日はショウを観てレビューを書いて28日は写真を撮ろうと思っていたのだが、実際27日に会場へ行ってみるとフォトパスが発行されていたので、急遽両日とも撮影する事になった(27日は撮影予定してなかったのでカメラもフル装備できなかったけど)。なので、実はショウの内容は殆ど覚えていないのでまともなレビューは書けないのだが、幾つか思ったことがあるのでそれを書かせていただきたい。

会場にいたオーディエンスは昔からの Pumpkins ファンが多いと思われるが、何しろ野郎率が高い。だいたい30歳前後の男性が80%ぐらいかな。女性も勿論いるんだけど、大体男性のパートナーが一緒で(夫婦とか)女性同士のお友達グループみたいなのは殆ど見られなかった。ショウは、Billy Corgan がハープとアコギをプレイするアコースティックセット(キーボーディストの Lisa Harriton が途中から参加)からエレクトリックのフルセット、途中でまた短いアコースティックセットを挟んでまた最後にエレクトリックセットといった構成。これで約3時間。さらに毎日セットリストが変わるから、相当のボリュームである。

それにしても。アコースティックでさらっとショウが始まったとしても、最初の一音で「あ、Pumpkins の音だ」と思った。改めて自分が今まさに Pumpkins のショウに居ることを認識させられた。このショウを観るまでに色々考えたのだけど、メンバーも入れ替わってるし、ツアーが始まって色々写真や映像を見たけど、全てが Zeitgeist 仕様になってたし(衣装やステージのセットとか)、全く新しい Pumpkins なんだろうな…と予想してたんだけど、確かに新しいけど、でもどう聴いても Pumpkins の音だし、 Pumpkins の音楽だった。その瞬間、なんだかよくわからなかった不安が払拭され、一気に自分のボルテージが上がってきた。 Billy は以前のようにギターを弾きまくるし、その姿が非常に格好いい。 Jeff Schroederとの「ギタリスト」同志のからみも見ごたえ十分。 Jimmy のドラムもスタイル的にはほぼ Machina の頃と同じで力んだ感じもなく自然なのだが…ついつい目がいってしまう説得力のあるドラミングだった。またアノ頃より一層安定感が増している感じがして、一種スリリングさが減ったかもしれないけど、 Jimmy そのもののプレイで素晴らしかった。

そして新しいメンバーだが、前述の Jeff のギターは素晴らしく、彼もまたかなりのギターおたくだと思う。 Billy のリクエストに十分に答えていけるギタリストだと思うし、今の Pumpkins のスタイルに合っていると思った。ベースの Ginger も Pumpkins の歴代3人目の女性ベーシストとなったが、 D'arcy や Melissa Auf Der Maur とはまた違うスタイルで、グラマラスでキュートな容姿だがプレイはとてもクールで男っぽく Pumpkins にまた違ったテイストを加えている感じする。オフでの姿を見ていても Lisa、Ginger、Jeff はとても自然に Pumpkins のショウをエンジョイしているようにみえるし、そんな新しいメンバーを親のように彼等のキャリアを育てている(特に Pumpkins というビッグネームの下で) Billy と Jimmy …といった感じかな。


変な言い方になるけど、排他的な意味合いは全くなく Pumpkins は Pumpkins ファンのものだな…と感じた。Pumpkins ってなんとも不思議なバンドで、異様とも思えるような愛情で Pumpkins を大事にしてる人(ファン)が多い気がする。それがバンドに対してでも個々のメンバーに対してでも。昔からそんな気がする。そもそも背が高くて猫背で八重歯持ちの左利き(ギターは右だけど)と、男バンドの中で一人表情変えずにもくもくとベースを弾くブロンドの女の子、それに東洋系のギタリストに、変な(でも凄い)ドラムを叩くごっつい人といった無茶苦茶なメンバー構成でビジュアル的にもインパクトは強烈 − そんな Pumpkins が好きになった人は相当変わった人(Geek)なんじゃないかと思うわけだ。そしてアレから十何年も経ち、みんな大人になったし、新しいファンもその時その時で取り込まれてきたけど、やっぱり Pumpkins ファンは全体的に…変だ。そしてみんなずーっと Pumpkins を愛し、解散から6年半経った今また集まって、何も変わらず Pumpkins のショウを楽しんでいる。解散−リユニオンにあたり色々言われたりしてるけど、そんな雑音は聞き流しておいて全く問題ない。格好よくはない表現だけど、まさに「わっかるかなーわっかんねーだろうなー( by 松鶴家千とせ)」の世界だ。なので Pumpkins は決して U2 や Coldplay みたいなアーティストにはならないだろう。 全く大衆性はないと思うから。ただ、Pumpkins という合言葉に集まったマイノリティが各国に散らばって存在してて、何か大きなイベントがおきるとざわざわと集まってくるような(若干宗教的だけど)そんな Geek な世界だけど、今も Pumpkins はとてつもない愛情をもって Pumpkins ファンに愛されてると思う。

…なんて、ふとライブを観ながら感じてしまった。

もし James Iha とか D'arcy が居たら?と想像すると…残念ながら今の Pumpkins には全くマッチしないと思う。 Mellon Collie ツアーのの頃から極度にホームシックになってしまった D'arcy の繊細さや James 自身の確立された音楽性を考えたら、この Pumpkins にいたらハッキリいって浮くと思うし、解散せずに Pumpkins が続いていたとしても結局 James が脱退する結果になっていたと思う。勿論オリジナルメンバーでずっと続けていければいいに決まっているが、既に一旦 Jimmy も解雇された事があるし、繊細な D'arcy も脱退、 James も自分のスタイルを追求すべく新しい道を歩んでるわけで、もうオリジナルメンバーで同じステージに立つというのは夢のまた夢だろう。でも、それぞれの未来を尊重すべきだし、過去を振り返ってばかりもいられない。というのも、今回、自分が一番感動した場面は Muzzle や Starla、 Disarm など古い曲をやっているときではなく、新曲 United States の演奏中だった。これは Live Earth では若干コケめ(失礼)ではあったが、 Pumpkins ファンにはウケていて、特に後半のインスト場面では既に「合いの手」が入るくらい浸透している曲だ。再結成されたバンドがライブをやれば古い曲で盛り上がるのは当たり前なのだが、 こういった新しい曲で盛り上がれるという事は、今後の Pumpkins に期待できる証拠だと思う。懐古的にならず、まだ進化を期待できるなんて素晴らしいことじゃないか、と。別ブログでも書かせていただいたのだが、この曲の後半の部分は、今まで Pumpkins が Silverfuck などの曲でやっていた構成そのもので、 Pumpkins ファンにとってはお約束のフレーズというか、慣れ親しんでいる音なのだと思う。なので、こういう曲が生まれてくる以上、 Pumpkins ファンにとってまだまだお楽しみは続くと確信している。

今回のライブ観戦中に Pumpkins ファンにとってある意味重要人物と思われるEさんに凄い偶然ながらお会いした(あちらから声を掛けてきてくださったんだけど)。28日に会場の2階席でEさんと話していたら、Eさんが下のフロアで最前を陣取ってる別の男の人に手を振っていた。「彼はね、フランスから来てるんだよ」と教えてくれたので、撮影のため最前のフォトブースに行った際にそのフランスから来たというJさんとちょっと話してみた。Jさんが「Pumpkins のショウのために日本から来たの?」って訊いてきたんで、そうだよと答えると、嬉しそうな笑顔でやっぱりそうだよねー♪といった顔をしてた。今までいろんなアーティストのショウを観にアメリカに来てるが、いつもそのショウのため(だけ)に日本から来たというと大抵ドン引きされるんだけど(こっちとしてはそんなに珍しくないと思うんだけど、あっちからすると少々不気味らしい/笑)、そういうのが当たり前のようになってる Pumpkins ファンはやっぱりちょっと「おかしい」。そういえば、2000年ラストツアー中ロンドンのウェンブリー公演に行った際も、ドイツ、韓国、フランス…等など各国からファンが集まっていたな…。最近アメリカの友達と IM をやってた際、「San Francisco に Pumpkins 観に行くんだよ。きっと古いファンも沢山あつまると思う」と話したのだが、本当にそうなった。 バンドのリユニオンはつまりファンのリユニオンでもあるのだ。こうして古く、また新しいファン達が同じ目的で再び集える場所が出来た事は本当に素晴らしいことだと思う。それも前述のような「進化を期待」しながらだから、とてもポジティブな事だと思う。

Jimmy と Billy 曰く、まだ全く本決まりではないけど、今のペースでいくと日本公演は来年の1-2月になるだろうということだった。もし来日公演が実現したら、新しいファンも古いファンも新生 Pumpkins のライブに是非足を運んで欲しい。流石に日本では3時間のノンストップライブとはいかないかもしれないけど、それでもファンにとてはとても貴重なショウになると思う。



以下ちょっとした追記:
1. 28日には Linda Strawberry がゲスト参加して、 To Sheila [from Adore] をプレイ。これは 2000年 Metro でのラストライブ以来の事。
2. その Linda のマイスペ blog (http://blog.myspace.com/strawberry) によると、 Pumpkins は毎日4時間(!)練習をしてるそうで。
3. それを読んでなるほどと思ったのだが、27日に Heavy Metal Machine をプレイしたのだけど、そのアレンジが Tarantula のようなシャッフルで「Heavy Metal なのにシャッフル??」と違和感を感じたのだけど、28日には普通のメタルビートでプレイされてたので、その毎日のリハーサルの時にアレンジを決めてるんだろうな、と。納得。
4. 同日、 Jeff の機材が壊れて10-15分くらいショウが中断した。それに Jeff がむかついたのか…は判らないけど、最初のセットが終わった時に彼が持っていたギターを床に叩きつけて足早にステージから去るシーンがあった。かなりご立腹なのかとおもいきや、ショウの後は普通にいつもの穏やか〜な感じでお友達やファンと談笑してました。ちなみに、 Pumpkins がその壊れた Jeff のギターを 1,000 ドルで売りに出したとか出さなかったとか……?
5. さらにその同日。アンコール1回やったところでセットが終了、客電がついてしまったのだが、そこにいたファンはそれに全く満足できず3/2ぐらいのファン(勿論野郎ばかり)がずっと残って Pumpkins! Pumpkins! とコールを続けた。すると 2F のバルコニーから Billy が姿を現すと怒号のような雄叫びをあげるファン達。でも、まだ帰ろうとしないファンは更にコールを続け……とうとうファンの粘り勝ちといった感じで、また客電が落ちてアンコールの2回目が始まってしまいました(笑)。さらにその2回目のアンコールは Billy と Jimmy がアコギを持って現れ Zeitgeist をプレイ。全く予定外で貴重なセットになりました。してやったり??
6. そのまた同日、 Jimmy とちょっとだけ話すことができたのですが、Zeitgeist がオリコンの洋楽チャートで初登場2位だったことをとても喜んでました。

 
       
       
       
       


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