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9:45頃、ステージが暗転してしびれをきらした観客が叫ぶ。「zwan!」「zwan!」。なんとも聴き慣れないというか呼び慣れないという感じで、ちょっと照れ気味。だが大きな拍手とともに、ふらりとメンバーが登場。matt(guitar)、billy、jimmy、skullfisher(bass)の順で定位置に。そして、殆ど前置きもなく1曲目が始まった。実は自分、このライブをある意味「素」で観たかった為、いたるサイトにアップされていたzwanの音源を聴かないようにしていた。何の情報もなくzwanの曲を聴きたかった。なので、残念ながらセットリストがわからず、曲名をお伝えできないのですが、御勘弁を。

とにかく「ポップ」。billyの今までの曲にある「ひねり」はほとんどない。良質のポップソング。1曲目はどちらかというとポップロックと言う感じではあるが、2曲目に至っては、 80年代のイギリスポップのトリビュート的な曲。ふと7月のフジロックでbillyが参加したnew orderを思い出してしまった。そういった曲が延々と続く。billyの顔もなんとも穏やかというか、照れくさそうな感じもしたが、新しい曲を思う存分歌っているという感じ。歌詞があやふやで困った顔をしても、許せてしまうようなあたたかい雰囲気。それがzwanにあった。mattというguitaristは…面白い。まったくミュージシャンに見えない格好でキャップに眼鏡、なんかdinerのオーナーとかガススタンドで働いていそうな雰囲気。skullfisherは…謎。まず観客に前を見せない(笑)。小柄でアジアンぽい顔をしているが、妙に地味。不思議な人。

7曲目ぐらいで、beatlesの"don't let me down"。みんなと楽しく合唱。あまりthe smashing pumpkinsの曲と比較はしたくないのだが、「jesus」(jesus i?)という曲は
pumpkinsファンにも馴染み易い曲だと思われる。明るい"starla"というか"drown"というか。ポップなのだが、唯一曲の展開が激しく変わり、そしてちょい長めの曲。しかしこの曲が異様にウケた。pumpkinsっぽいというのではなく、billyの曲を知り尽くしたファンが、ノリのツボを押さえているといった感じで、この曲で初めて観客が思いっきり飛び跳ねたり揺れたりしてかなりの盛上がりだった。この曲は素晴らしいです。そういえば、この曲の導入部分でmattが変な「合の手」をいれてた。この人、絶対面白い人だ。ちょっと気になるキャラクターです。billyはzwanでもギターを弾きまくっている。ギターソロなどはmattの方をき気にしつつも「ここは自由にやらせてもらうよ」的な顔をして、マイクスタンドが立っている位置から離れて大きなアクションでかき鳴らしていた。

さて、師匠ですが、痩せた。髭はやしてた。髪の毛がダークブラウンだった。タバコ…吸ってた(笑)。しかし、それにしてもドラミング。なんと普通なことか!これもbilly同様、師匠のドラムパターンをある程度覚えていると、次にくるおかずパターンが読めてしまうくらいシンプル。あえてそう言うドラミングなんだろうが、これはjimmyファンはどう感じるだろうか?シ ンプルで、ストレートな8ビート。5曲目くらいで、ほとんどスネアを使わず、タムのコンビで構成された曲などもあるのだが、全体的には本当にストレート。これは今回のzwanのある意味「テーマ」なのかな?

今回14曲程演奏されたと思うが、観に来ていた人達の反応は素晴らしくよかった。はっきり言ってthe smashing pumpkinsの面影は殆どない。どこかのサイトで1979やuntitledみたいな曲だと書かれていたが、それは多分違うと思う。少なくとも自分は違うと感じた。「幸せな音楽」なのだ。今回披露された殆どの曲はハッピームードだ。残念ながら歌詞を聞き取ることができないので、もしかしたら悲しい曲も有るかも知れないが、素直に笑い喜び楽しめる曲ばかりだ。これも某サイトの書込みにあったのだが、だれかが「ブリリアントなロックだ」と書いていた。そう。その言葉はぴったりかも。「ブリリアント」なのだ。billyはまた別の側面から「幸せ」を目指し歌っていくのだろうか? それがzwanで出来るといいな、と思う。実際このzwanの曲がどういった形でリリースされるかは判らないし、この曲もこのままの形なのかは定かではないが、このzwanのお披露目の意味は、とても深かった。しかしあくまでもポジティブで、悩ませるものはあまりない。zwanのテーマを提示することそのものが今回のショウの目的だったのだろう。今現在では、多分the smashing pumpkinsのファンでzwanを聴いた人が多いと思う。だが、全く違うバンドだ。これは断言できる。きっとthe smashing pumpkinsのファンは考えさせられただろうと思う。でもこれで良かったと感じた。zwanの誕生を本当に素直に喜べる。billyや師匠のなんとも穏やかな微笑みを観てると、本当に「よかったな〜」と思えた(笑)。

ただ、やはり師匠のドラミングには、自分はちょっとだけ動揺している。曲も判らないから全体的にライブを観ていて、ドラムパターンを細かく聴いている訳ではないし、途中リモートハイハットとタムでさらりとキメたフィルインなんかには「おおー」と完璧な日本語で叫んでしまったものだが、色んな意味で意表をつかれた感じである。7月に来日したbillyが「今度のバンドはアコースティックだよ」と言った時は、pumpkinsのset the ray to jerryのような曲を想像して、こんな感じのドラムだったらいいなーなどと勝手に想っていたのだが、どうも師匠の目指す所は違うらしい。全く悪い意味ではないのだが、これを自分のなかで消化するには、もうちょっと時間が必要なようだ。実の所、師匠の叩く”普通の”8ビートに対して少々抵抗がある。でも、自分はいわゆる「8ビーター」で、いかにシンプルに格好よく8ビートを叩くかが自分のテーマなのだが、一番リスペクトしているドラマーの”普通の”8ビートが苦手なのだ。これがpumpkinsのアルバム「mellon collie...」にちょっと抵抗を感じる要因の1つでもあるのだが。 逆になんというか問題定義をされた感じで、師匠のドラムを研究するネタが増えた感じか。でも「zwanはpumpkinsとは違う」と言っている自分こそが、このzwanに対してpumpkinsの面影を追い求め、そのギャップに悩まされているとしたらとても滑稽だ。そうではないことを自分に祈りつつ(笑)、しばし師匠の今後をじっくりと見守りたい。

結局アンコール1曲を披露して、これまたなんの締めもなく、ライブはパッと終わった。そのそっけなさがまたニクい。観客もなかなかその場から離れず、談笑していた。なんかとてもよい雰囲気だった。zwanのお披露目ツアーはこれで終了したが、きっとメンバーも満足している事と思う。今度はちゃんとCDでリリースして(笑)、そのストレートなポップソングをじっくり聞かせてほしい。

zwan誕生、おめでとう。

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